INTERVIEW

長谷川哲雄 副医長

今回特別賞を受賞した慶應義塾大学 医学部 リウマチ膠原病内科の長谷川 哲雄 先生。今回受賞した画像を撮影するまでの経緯やこれからのイメージングに対する期待とともに「関節破壊を惹起する悪玉破骨細胞の同定」について語っていただきました。
研究内容


この度は特別賞の受賞おめでとうございます。病態を非常に躍動的に表現されている画像だと感じました。

― ありがとうございます。
イメージングも生理的な状況のイメージングはよくあると思いますが、炎症を起こした病変部のイメージングは赤血球が豊富で光が通りにくく、なかなか見かけません。一方で、炎症が起きたが故に普段は見ないような新生血管や炎症細胞がたくさんあって、生理的な状況と病気を起こした状況の比較が進むとより深い理解に繋がるのかなと考えています。

長谷川先生のご研究ではマウスを用いられていますが、マウスの関節組織を取り出してイメージングを行うために試行錯誤されたのでしょうか?

― 画像を見るとシンプルですけど、本当に泥臭いですね。イメージングをする以前に、 1 mm もない部位の視野を定めるために別の実体顕微鏡使ってようやく見えたという状況でした。

そうですよね。今回の画像にあった「関節の炎症」は特定の関節組織ではなく、全身で起こるものなのでしょうか?

― そうですね。関節にとどまらず、関節炎を発症すると普通の骨の骨密度も低下することが既に分かっています。ただし、関節で炎症が始まるからそれが全身に及ぶのか、もしくは骨髄の中から炎症が始まり関節に波及するのか、その方向性はまだ分かっていません。
また関節リウマチは、関節だけの病気ではなくて、全身性の免疫の異常を惹起することで、肺などにも傷害を与えることがあります。
「関節リウマチ」という疾患名ですが、病気としては全身の自己免疫疾患という立ち位置です。

関節リウマチについて未だ解明されていないことが多い中で、改めて長谷川先生のご研究のようにイメージングすることに意義があると感じました。その中で、イメージングを関節リウマチの治療へ活かすために現在進められていることはありますか?

― 破骨細胞の骨吸収能を可視化できるプローブが使えるようになりました。このプローブを使うことで骨の内側の生理的な破骨細胞が骨を溶かす様子を見ることはできるため、現在は関節を壊す悪いほうの破骨細胞の機能を可視化するための試行錯誤しているところです。
私はどちらかというと臨床寄りの人間なので、基礎系の教室で開発された細胞の機能を可視化できるようなプローブを関節炎という臨床像と組み合わせていくことで新しいことがわかればいいと考えています。

長谷川先生、病態解明の1つの手がかりとなったイメージングの面白さ、そしてなかなか伝わりにくい研究で苦労された点まで、貴重なお話をありがとうございました。改めて、特別賞受賞、おめでとうございました。

― ありがとうございました。