由来種 :窒化ガリウム
器官・組織・細胞(株)名:窒化ガリウム
染色・ラベル方法等 :染色はしていませんが、PCで青系色に色味を変更しています。
観察手法 :多光子
対物レンズ :10倍
作品画像取得年 :2022
宇佐美 茂佳
炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム、酸化ガリウムなどSiよりも優れた物性値を有する半導体材料です。炭化ケイ素は近年、電気自動車への採用が拡大しています。またGaNは携帯充電器に採用されるなど身近になってきています。
窒化ガリウム。青色LEDの材料であり、2014年に赤﨑勇先生、天野浩先生、中村修二先生がノーベル物理学賞を受賞されたことでも知られています。
酸化物気相成長法。ガリウムと水蒸気の反応からGa2Oガスを生成し、基板上でNH3と反応させることでGaN結晶を得る気相成長法です。
気相成長法では、元となる基板の結晶情報を引き継がせて所望の結晶を成長させるエピタキシャル成長法が用いられます。多結晶は元となる結晶から配向がずれてしまった結晶を指します。多結晶は最終的に半導体デバイスの不良につながりますので、多結晶の発生を抑制して単結晶を得ることが重要となります。
気相成長は、その名の通り気相(気体)中で結晶を合成する手法です。液体中で合成する場合は液相成長法と言います。
Q1なぜ次世代パワー半導体の研究開発が進められているのでしょうか。
また次世代パワー半導体の実用化にはどういった課題があるのでしょうか。
脱炭素社会の実現に向け低消費電力社会の実現は急務と言えます。
現在主流のSi半導体は効率の限界に近づいており、我々は次世代パワー半導体材料である窒化ガリウム(GaN)の研究を行っております。
GaNの実用化にあたって結晶品質の低さや高い製造コストがこれまで大きな課題でしたが、多くの研究者の努力によって高品質結晶が実現され、製造コストについても克服されつつあります。
Q2次世代パワー半導体の研究開発において多光子励起顕微鏡が用いられているのはなぜでしょうか?
また多光子励起顕微鏡を用いて先生がすでに取り組まれている研究はなんでしょうか。
これまで結晶欠陥の観察はカソードルミネセンス法やエッチピット法などが主であり、表面の転位分布を見ることができても転位の追跡評価は困難でした。
そのため、転位がどこで生じてどのように貫通してくるのか成長履歴に対する転位伝搬挙動は不明でした。
多光子励起顕微鏡を用いることでGaN 結晶内部の欠陥を3次元的に可視化できるようになり、結晶の欠陥をなくすにはどのようにすれば良いのか、次の一手を考える極めて強力なツールとなっています。
Q3これからの産業をリードすると期待される本テーマを研究されていますが、研究を進めていくうえでの難しさ、そして先生にとって研究を推し進めていく原動力はなんでしょうか。
GaN パワーデバイスの一刻も早い社会実装が望まれており、現在国家プロジェクトとして他大学や企業と連携して研究を推進しております。
結晶に求められるスペックを達成することに難しさを感じることもありますが、日々進化するGaN 結晶をこの目で見ていること、また社会からの期待を常に感じながら研究できることが楽しく、研究を進める原動力となっています。