ヒト由来筋膜
サンプル詳細:無染色
観察手法 :二光子励起顕微鏡(SHG光)・倒立・蛍光
観察倍率 :20x
撮影年 :2021
顕微鏡データ:静止画
西澤 志乃
皮下組織の間にある浅筋膜と、皮下組織と筋層の間にある深筋膜の二種類が存在する。コラーゲンやエラスチン、脂肪細胞から構成されている線維状の構造であり、筋膜には血管やリンパ管、神経も存在する。
Secondharmonicgeneration;SHG(二次高調波発生)は、励起される物質の極性と光に対する配向性に依存して発生する。SHGを誘起する線維は、コラーゲンやアクトミオシンなど極性を持った物質が同 じ方向を向いて集合した構造をとる。
弾性線維の主成分である。皮膚や血管などの臓器 に存在し、弾力性を与えている。
膠原線維ともいう。真皮における主な線維成分であり、真皮乾燥重量の70%を占める。きわめて強靱な線維であり、皮膚の力学的な強度を保つ支持組織である。
白血球の中の顆粒球の一種であり、白血球全体の約45~75%を占めている。強い貪食能力を持ち、細菌や真菌感染から体を守る主要な防御機構に寄与する。
主に血管内皮細胞、気道や腸管の粘膜上皮細胞などに存在する高親和性トロンビン受容体である。
大腸菌やサルモネラ菌などのグラム陰性細菌の細胞壁を構成する成分。糖と脂質が結合した構造をしているので、「糖脂質」あるいは「リポ多糖」と呼ばれる。様々な毒性を示す生物活性を持つことから内毒素 (エンドトキシン)とも言われる。
播種性血管内凝固症候群(disseminatedintravascularcoagulation;DIC)は、様々な基礎疾患によって凝固系が活性化され、全身の微小血管内に血栓(微小)が多発する病態であり、重症化すると臓器障害などが起きる症候群である。
SuperficialMusculoaponeuroticSystem; SMASは、顔面部位や首に存在する浅筋膜を示す。9.自家蛍光 エラスチン線維やコラーゲン線維のような生物学的構造が、光を吸収した際に起こる光の自然放出(フォトルミネセンス)。
体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体、ウイルスに感染した細胞や細胞の死骸などを貪食する細胞。異物一般に対する防御機構である自然免疫を担い、炎症反応の誘導やT細胞に異物の情報を伝え活性化させるなどさまざまな役割を持つ。
Q1 今回発見されたトロンボモジュリンの抗炎症作用ですが、どういった点が新しい発見になるのでしょうか。
生体イメージング技術を活用し、好中球の動態をリアルタイムに解析したところ、トロンボモジュリンアルファのD1ドメインが、好中球のRollingadhesionを抑制することで抗炎症に働く可能性を見出しました。
Q2 血管内皮に発現しているトロンボモジュリンはどのようにして抗炎症作用を制御しているのでしょうか?なにかメカニズムでわかっていることはありますでしょうか。
トロンボモジュリンのLectinlikeDomain(D1ドメイン)が、壊死細胞やマクロファージ10から放出されるHMGB1を吸着中和することで炎症を抑制することや、他にもヒストンやLipopolysaccharide(LPS)を吸着中和することで抗炎症作用を発揮することが報告されています。
Q3 肌を研究されていくうえで、浅筋膜はどういった点で注目されているのでしょうか。ご研究されるうえでのイメージングの重要性とともに、今後の展望についてもお聞かせください。
筋膜は、単純に筋肉の滑りの緩衝材として捉えられてきたが、近年筋膜は骨や脂肪への分化能力を持つ前駆細胞の新たな場所や、創傷部位に遊走する細胞がプールされる場所であることがわかってきました。未知な部分が多い筋膜に魅せられ、今後はイメージング手法と細胞機能解析などを組み合わせることで、筋膜の新たな役割や、皮膚との関係性を探していきたいと思います。