ヒト由来細胞株HeLa細胞、ミトコンドリアのクリステ
サンプル詳細:細胞膜透過性ミトコンドリア蛍光標識剤(MitoPB
Yellow)標識した飢餓状態下のHeLa細胞
観察手法:超解像顕微鏡、蛍光
観察倍率:100X
撮影年:2018年
多喜 正泰 特任准教授
1: 名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所
2: 理化学研究所 生命機能科学研究センター 細胞極性統御研究チーム
ポジトロン断層法。陽電子検出を利用したコンピューター断層撮影技術。
核磁気共鳴画像法。磁場と電場を利用した生体の画像化技術。
コンピューター断層撮影法。放射線を用いて撮影した体の断面像をコンピューターによって再構成する画像化技術。
光の回折限界を超える分解能で撮像するイメージング技術。細胞の微細構造を捉えることができる。
観察対象に電子線をあてて拡大像を得る顕微鏡。高い空間分解能を特徴とする。
試料に照射したX線の回折を解析することによって、分子の3次元構造を決定する手法。
アデノシン三リン酸。生命活動の細胞活動エネルギー。
酸素が外部からの刺激によって、より反応性が高い状態に変化したもの。
遺伝子で決められたメカニズムにおこるプログラムされた細胞死。
アミノ酸などの栄養成分を含まない培地で培養した細胞。
ミトコンドリアに関わる遺伝情報が含まれるDNA。
代謝に関わる酵素の遺伝子が変異し、それによって引き起こる病気の総称。
神経細胞のなかで、ある特定の神経細胞群が徐々に障害を受け脱落してしまう病気。
Q:クリステの形態変化はなぜおこるのですか? それは細胞機能にどんな影響を与えますか?
A:クリステの形態変化機構はまだわかっていません。ミトコンドリア機能と形態、さらに細胞機能との関連性を明らかにすることは非常に重要な研究課題です。今回の技術によって生きた細胞内のクリステを明瞭に観察できるようになったことから、その機構解明が期待されます。
Q:なぜこれまで、生きた細胞のクリステ構造は観察が困難だったのですか? 観察手法とミトコンドリア標識剤はあったと思いますが。
A:細胞により異なりますが、隣接するクリステの距離は100 nm以下です。これは光の回折限界よりも近接しているため、従来の光学顕微鏡では両者を独立して観察できません。超解像顕微鏡であればクリステの観察は理論上可能ですが,これに適したミトコンドリア標識剤は存在しませんでした。今回のMitoPB Yellowは極めて高い光安定性と内膜選択性を有しているため、超解像顕微鏡によるクリステ観察が実現できました。
Q:ミトコンドリアの異常が引き起こす疾患に対し、どのような薬が開発されていますか?
A:ミトコンドリア機能の障害により引き起こされる病態は、ミトコンドリア病として難病指定されています。原因遺伝子は同定されつつありますが、有効な薬の開発までには至っていません。MitoPB Yellowと超解像顕微鏡の組み合わせにより、新薬のシーズ探索や薬の作用機序解明などが進展することを期待しています。