由来種 :Hypsibius exemplaris(ヤマクマムシ)
器官・組織・細胞(株)名:全身
染色・ラベル方法等 :クマムシ特異的ベクターTardiVec
緑(mEGFP): 表皮
赤(mCherry): 筋肉
観察手法 :明視野、蛍光、共焦点、倒立
対物レンズ倍率 :63倍
作品画像取得年 :2022
田中 冴
緩歩動物門を構成する、体長数百ミクロンの微小水棲動物。湖沼や海だけでなく、頻繁に乾燥する苔地などにも生息している。
これまでに1400 種類程度のクマムシが同定されている。本研究では、札幌由来のヨコヅナクマムシと、世界で広く研究されているヤマクマムシを主に使用した。
含水量3% 程度まで脱水し、代謝活動を一時的に停止した状態のこと。
クマムシは通常は水のある環境に生息しているが、周辺環境が乾燥に伴い、乾眠の状態に入ることで乾燥に耐える。
乾眠状態のクマムシは、超低温・高温・高圧・真空などの極限環境にも耐えることができ、宇宙空間への曝露からも生存が確認された。
微小のガラス針を用いて、さまざまな溶液を対象内に打ち込むことができる実験手法のこと。
本研究では、遺伝子発現ベクターを溶液としてクマムシの体の中に打ち込んでいる。
電気によって細胞の膜に微小の穴を開けることで、DNAなどの分子を強制的に細胞内に取り込ませる実験手法のこと。
本研究では、インジェクション後のクマムシにエレクトロポレーションを施すことで、クマムシの細胞の中に遺伝子発現ベクターを送り込んでいる。
緑色蛍光タンパク質。本研究では遺伝子発現ベクターの機能を確認する目的、および、クマムシタンパク質の細胞内局在を確認する目的で使用した。
任意の遺伝子由来のタンパク質を合成することを目的として作成された環状の二本鎖DNA。本研究で開発した遺伝子発現ベクターは、クマムシのゲノム由来の遺伝子発現調節領域を組み込むことで、クマムシの細胞内で任意のタンパク質を合成することを可能とした。
クマムシ特異的な超親水性タンパク質として同定されたCAHSとSAHS は、それぞれ細胞質と細胞外領域に局在し、脱水時における細胞膜やタンパク質の変性や癒着を防ぐような働きがあるのではないかと考えられている。
貯蔵細胞は、クマムシの体腔空間に浮遊する細胞であり、1 個体に数百個程度存在している。
乾眠から復帰後に必要なエネルギー源を貯蔵する役割を持つと考えられている。